「ここはとあるレストラン。」 rap:nitta,track:村上ヒデキ 俺は雑誌編集が生業の、しがないグルメライター 片田舎から都会へ出てきたが、しがないグルメライター 売れる記事が書きたい あのマンションを買いたい 都会に迷う、迷う、迷う日々 ハングリー精神病だ 夕食も買えずに帰るのは六畳一間の畳を感じる布団の上 夢だけは見えるから、さっさと寝よう、と、うつら・・・の苦痛だ 口うるさい編集長からの着信が鳴り響く 「お前の田舎の山の奥の店だ。分かるか。  名前は「ここはとあるレストラン」だ。  明日行ってこい。」 「・・・明日ですか。」 深い深い森の奥、灰色の不快な看板を潜る 「そこの坊や。」と、好々爺 瞳孔が開いたシルクハットの中からお品書き、ごらんよ 今日のお勧め、と黒板のチョーク 「ナポリタンが 人気です」とのこと リンリンリンと響く三回目の音で、寝てた石畳の根のコック帽は、夢見心地から覚め 箒掃きの召使 逃げるコックローチズ粘着質に絡まる やたら目につくし、虫唾が走るね 髭面の歯の隙間から漏れる やたら陰気で陽気なご挨拶 「Good evening. How many are in your party?」 This is a restaurant famous for "neapolitan".... 「お一人様で?そちらはお連れ様で。  おっと、それは傘でしたか。失礼失礼。」 ちょいと腐臭混じりの言葉で、ここまで来たこと後悔したところで、誘導のままに着席 ぶつくさと、文句つけつつ、溜まるだけの鬱憤をメニューにぶつけつつも、つつがなく注文を終える そう、もちろん人気のナポリタンだ 狸のような店主の手元は、レンガに隠れて見えやしない ぶすっとしたウェイター 土臭い水が、ゴトリと置かれ やはり、感じるのは腐臭 何故かカチカチと金属音の響く店内に言葉が出ないの そんなこんなで手元に来た人気のナポリタンを口へ運べば・・・ 一口 なんか変だ 二口 しょっぱい 三口 変にしょっぱい 頭が痛く、血生臭く、喉の奥に引っかかるのは何? 堪らず呼んだウェイターに苦情を言った すると、奥から店主出てきてこう言ったんだ 「すいません作り直します。御代も結構です。」 ナポリタンがくる。俺は食べた。今度は平気みたいだ。 俺は店をでた。 しばらくして、俺は気づいてしまったんだ…… ここはとあるレストラン…… 人気メニューは……ナポリタン……